SPREAD

2022.10.28

ジャパン・ハウス ロンドン「The Carpenters’ Line」展

英ロンドンにある日本の情報発信拠点ジャパン・ハウス ロンドンにて、「飛騨の匠」を通して日本のものづくりに迫る展覧会が開催中です。

「飛騨の匠」は、森林が92%の面積を占める岐阜県飛騨地域で1300年の歴史を持つ木工職人の総称です。本展では、飛騨地域の森で育つ多様な樹種から始まり、過去から今現在までの道具・文化・木工技術・家具・生活用品・伝統工芸・仏像・神事・唄・教育まで、「飛騨の匠」にまつわる営みをご覧いただけます。会場に入って最初に現れるのは、森の写真を背景にした90点の樹種とシンプルな杓子。多様性のある自然の森に人の手が入り、木が道具となり人の営みを築いてきたことを伝えます。続いて、釘や金物を使わず木材を繋いだり組み立てる技術「木組」が来場書を驚かせ、木のこぶのナチュラルシェイプを生かしたクライミングホールドがデザインの未来を示唆します。

展覧会タイトル「The Carpenters’ Line」は、二つの意味を含みます。一つは木工道具の墨壺、もう一つは木工職人が紡いできた系譜です。

SPREADは、キービジュアルに始まり空間からコミュニケーションまでのトータルデザイン、展覧会を築くためのリサーチを担当しました。キービジュアルは、飛騨で活動する現代の木工職人とその背景を支える森の写真を山桜とエドヒガンザクラの断面でかたどり、蝶型の木片で木を固定する技術「千切り」で繋ぎ合わせています。公共機関での告知媒体、館内やオンライン上の案内へと展開しています。空間は、飛騨の森や樹木を写したカーテンが会場を仕切り、展示物と来場者を囲うように構成しました。日本の森と飛騨のものづくりの音で構成した会場音楽と組み合わさり、まるで飛騨の森を彷徨っているかのように展覧会を体感いただけます。飛騨は昔、山襞(やまひだ)と呼ばれていたことから、カーテンにも「ひだ(ドレープ)」を持たせました。リサーチは、現在に残る記録を読み解きつつ関係する様々な人にヒアリングし、長い歴史の中で多面的な側面を持つ飛騨の匠の全体像を繋ぎ合わせるような作業になりました。その過程で発掘した物品と情報は展覧会に組み込まれ、鑑賞に奥行きを与えています。

Biology of Metal: Metal Craftsmanship in Tsubame-Sanjo 燕三条 金属の進化と分化」、「Living Colours: Kasane – the Language of Japanese Colour Combinations かさねの森 染司よしおか」に続いて、ジャパン・ハウス ロンドンでの展覧会デザインは3回目となりました。1300年続く飛騨の匠の魅力を伝える展覧会です。ロンドンでぜひご体感ください。

「The Carpenters’ Line: Woodworking Heritage in Hida Takayama 飛騨の匠、伝統は未来を拓く」
会期:2022年9月29日(木)〜2023年1月29日(日)
会場:ジャパン・ハウス ロンドン
地下ギャラリー/1階ショーウィンドウ・展示ブース
101-111 Kensington High Street, London, W8 5SA
開館時間:月曜日~土曜日 / 10:00〜20:00
日曜日・祝日 / 12:00〜18:00
入場料:無料(事前予約推奨)

主催:ジャパン・ハウス ロンドン / 協力:高山市(「飛騨の匠展」推進委員会)、岐阜県 / 企画:サイモン・ライト(ジャパン・ハウス ロンドン企画局長)/ クリエイティブディレクション・プロジェクトマネジメント:method Inc. / アートディレクション・デザイン・リサーチ:SPREAD / 写真・映像:五十嵐絢哉、桑原剛志 / 音楽:斉藤尋己 / ライター:Goaheadworks Inc. / 翻訳:カプラン・ザッカリー

画像:©️Japan House London