Japan House London, 2022
https://www.japanhouselondon.uk/whats-on/2022/the-carpenters-line-woodworking-heritage-in-hida-takayama/
英ロンドンにある日本の情報発信拠点ジャパン・ハウス ロンドンは、「飛騨の匠」を通して日本のものづくりに迫る展覧会を開催した。
「飛騨の匠」は、森林が92%の面積を占める岐阜県飛騨地域で1300年の歴史を持つ木工職人の総称である。飛騨地域の森で育つ多様な樹種から始まり、過去から今現在までの道具・文化・木工技術・家具・生活用品・伝統工芸・仏像・神事・唄・教育まで、「飛騨の匠」にまつわる営みを展示した。森の写真を背景にした90点の樹種とシンプルな杓子は、多様性のある自然の森に人の手が入り、木が道具となり人の営みを築いてきたことを表現。釘や金物を使わず木材を繋いだり組み立てる技術「木組」は来場書を驚かせ、木のこぶのナチュラルシェイプを生かしたクライミングホールドはデザインの未来を示唆した。展覧会タイトル「The Carpenters’ Line」は、二つの意味を含み、一つは木工道具の墨壺、もう一つは木工職人が紡いできた系譜である。
SPREADは、キービジュアルに始まり空間からコミュニケーションまでのトータルデザイン、展覧会を築くためのリサーチを担当。キービジュアルは、飛騨で活動する現代の木工職人とその背景を支える森の写真を山桜とエドヒガンザクラの断面でかたどり、蝶型の木片で木を固定する技術「千切り」で繋ぎ合わせた。空間は、飛騨の森や樹木を写したカーテンが会場を仕切り、展示物と来場者を囲うように構成。日本の森と飛騨のものづくりの音で構成した会場音楽と組み合わさり、まるで飛騨の森を彷徨っているかのようにした。飛騨は昔、山襞(やまひだ)と呼ばれていたことから、カーテンにも「ひだ(ドレープ)」を持たせた。リサーチは、現在に残る記録を読み解きつつ関係する様々な人にヒアリングし、長い歴史の中で多面的な側面を持つ飛騨の匠の全体像を繋ぎ合わせるような作業に。その過程で発掘した物品と情報は展覧会に組み込まれ、鑑賞に奥行きを与えた。
会期:2022年9月29日(木)~2023年1月29日(日) / 会場:ジャパン・ハウス ロンドン / 主催:ジャパン・ハウス ロンドン / 協力:高山市(「飛騨の匠展」推進委員会)、岐阜県 / 企画:サイモン・ライト(ジャパン・ハウス ロンドン企画局長) / クリエイティブディレクション・プロジェクトマネジメント:method Inc. / アートディレクション・デザイン・リサーチ:SPREAD / 写真・映像:五十嵐絢哉、桑原剛志 / 音楽:斉藤尋己 / ライター:Goaheadworks Inc. / 翻訳:カプラン・ザッカリー
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