Life Stripe

SPREAD
2004-
Acrylic Art Print on Paper

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Life Stripeは、睡眠・食事・くつろぎ・仕事といった1日の行動を、リサーチに基づいて選定した21のカラーに置き換え、24時間の時間軸に沿って記録することから生まれる「生活の模様」です。

きっかけはSPREADの友人が引きこもりになったことでした。友人と同居して観察していると、行動はしていてもその自覚がないことがわかりました。そこで1日の行動を自覚できるよう行動記録を交換し始め、続けるうちに徐々に友人は活力を取り戻しました。その後、他者と自身の活動を顧みることの興味深さに注目。1日の行動を色に置き換え、鑑賞できる状態にすることを考案しました。まずは知人の心理学者に相談し、行動の統計調査を実施し、その結果をもとに行動項目を21に整理しました。次に色の統計調査を行い、結果をもとに項目の色を設定しましたが、「仕事・勉強」の色だけは統計結果と違う色に決定。多くの人は仕事と勉強に暗い色のイメージを持っていたが、生きる糧となる行動と解釈し、あえて活動的な赤に設定しています。

こうして多種多様な人々や動物、昆虫など、さまざまな生物の1日を色に置き換えてSPREADはLife Stripeを発表しました。何者もが、生きた事実は等しく美しい。現在、約15万人の1日の記録を収集しています。世界中でコロナウィルスによるパンデミックが起きていますが、この状況下で私達の毎日はどうなっているのか?とさらにリサーチを進め、Life Stripeを制作し発表を始めています。


1

Sailing Crew, Somewhere on the Atlantic Ocean, 1981.03.13, (21), ♂

グアダルーペからコンカルノーへ大西洋を渡るセーリングクルーの一日です。身支度、食事、睡眠、読書、身支度で4時間、仕事で4時間、合計8時間のセットを一日に規則正しく3回繰り返しています。これほど規則正しく時間を過ごすことは他にありません。限られた時間に読書をしていることが興味深いです。また、この彼の仕事以外の時間は別のクルーの仕事時間で、きびしい海を渡るために交代で働いている様子が想像できます。


2

A woman, Ibaragi, 2000.04.25, (89), ♀

亡くなる前日。寝たきりの祖母。


3

Snail, Shiga, 2004.07.14, (?), ♀♂

滋賀県で生息しているあるカタツムリの一日です。空気が乾燥すると体を殻に引っ込めて、殻の口に膜をはって休眠します。


4

Taxi Driver, Tokyo, 2005.04. 11, (50), ♂

24時間交代のタクシードライバーの一日。これほど睡眠をとらずに運転しているのかと思うと少々怖くなりますが、ハードな労働が強烈な色彩から想像できます。この日から約7年後、東日本大地震の日である3月11日の彼の一日について尋ねました。首都圏の交通機関が失われたため、ほとんどすべてのタクシーが深夜まで運行を続けました。彼は1時間の休憩をとった時を除いて、ずっと運転を続けたそうです。その日の最後の仕事は、千葉市幕張メッセの聖女学園から女性を自宅まで送り届けることで、8時間かかりました。 女性の両親は、娘を家に連れて帰ってくれた彼にとても感謝していました。東京に戻るのにさらに8時間かかり、前日仕事に出てから38時間後にようやく帰宅したそうです。普段からハードな仕事をしていたことで、有事に人を助けることが出来たとも言えるのではないでしょうか。


5

Peacock, Japan, Late May, (10), ♂

目玉模様の羽を開いてメスへアタックしている、繁殖期の孔雀の一日です。まず、夜明けと共に寝ている地上10mの木の上から降りてくると「ケオーン」と鳴いて仲間にあいさつをします。その後は決まってトイレ。それから羽を広げたり、踊ったりして、3時間半もの求愛活動を行ないます。お昼はすこし休憩して、夕方にまたもや3時間の求愛。その後はまた「ケオーン」と鳴いて木に登り、眠りにつきます。一日を模様で見るとまるで線対称。単調なようですが、太陽と共に活動したり、求愛に1日の4分の1もの時間を使う真剣さを思うと、憧れの感情すら覚えます。


6

Fiber Work Artist, Fukushima, 2011.03.14, (56), ♀

福島第一原発より、市境付近の一部地域が30km圏内に入っているいわき市在住の女性の一日。原発事故で3号機が爆発したこの日、彼女は夜中の3時頃に身支度をして、そのまま移動しているのが読みとれます。細いブルー(電話・メール・インターネット)が、明け方や夜に何度か断続的にあり、必死の連絡の様子を想像します。緊迫した目的行動の寒色系のなかに、黄緑(くつろぎ)やオレンジ(食事)、黄色(買い物)という温もりのある色を見ると、どんなときも欠かすことのできない人間らしい営みの大切さを顧みます。


7

From Fetus to New Born, Tokyo, 2011.05.06, (0), ♂

この世に生まれたばかりの人間の赤ちゃんの一日。誕生瞬間の時間から始まるのではなく、お腹の中にいるときから生きていますので0:00からも色はあります。睡眠とスポーツが交互にあるのは、8分おきの陣痛。イベント(出産)の後は「くつろぎ(カンガルーケア)、入浴、食事(授乳)、身支度(いろいろな検査を受ける)」と生まれて早々、新生児もけっこう忙しいとこの赤ちゃんのお母さんは語っています。


8

A baby reticulated giraffe, Yokohama, 2012.05.26, (0), ♂

野毛山動物園で生まれたアミメキリンの赤ちゃんの一日。昼はくつろぎと食事、夜はくつろぎと睡眠を小まめに繰り返しています。草食動物は、肉食動物から身を守るため、睡眠時間がとても少ない習性なのだそうです。1回の睡眠は10分未満、それを1日に何度も小刻みに繰り返し、一日の睡眠時間は合計約1時間です。黄緑(くつろぎ)が多く安らかに感じますが、食物連鎖の中で生きる動物の生態を想像すると、安全な動物園にいても緊張感と生命の猛々しさを感じます。飼育係の長倉さんによると、彼は生まれた時に自力で立ち上がることができず、足のリハビリのため親たちと離して育てたそうです。生後2か月ほどして、少しずつお父さんキリンとお母さんキリンと過ごす時間を増やしていきました。最初は緊張していた3頭でしたが、今は少し距離を取りながら日中は一緒にすごしています。


9

Snake, Tokyo, 2013.09.18, (7), ♀

東京のある家に住む蛇の一日。一日中くつろいでいます。このほかの日も一日中求愛している日もあり、人間と比べると長い時間感覚で生きているのかもしれません。


10

Cat, Basel, 2014.09.08, (14), ♀

あるスイス人アーティストが生前に住んでいた家に現在すんでいる猫の一日。世界中の猫と同じように一日のほとんどを寝て過ごし、時たま美容や遊びを行っています。長い睡眠をうらやましいと思う人もいるかもしれません。しかし、本来の肉食動物は狩りに成功したときしか食事を得ることが出来なかったため、なるだけ体力温存に勤めていた性質があります。のんびりしているように見えて、行動は生きることに直接関係しているのです。


11

Language Teacher, Zürich, 2020.03.07, (52), ♀

スイス在住のある日本語講師の一日。午後からワークショップの仕事が入っていたので、午前中朝市で買い物を済ませ、軽い昼食の後にワークショップの準備をしました。翌日から数週間以内に、休暇で日本へ行く予定だったはずの人たちでしたが、コロナで日本行きは断念された方々でした。その後夕食時に彼女の味覚がおかしいことに気がつきます。ワインがまずい。デザートが甘くない。きっと疲れているだけだと思い、早めに就寝。翌日、遊びに来きた娘に状態を話すと「コロナに感染したことに間違い無い」と言われ、ちょっと家族喧嘩になったそうです。一方で職場で感染者が出た彼女の夫は、すでに自宅待機一週間目でしたし、同じく感染者を出したチューリッヒ大学の教授と付き合っている娘も自宅待機を強いられていた最中の話でした。娘と夫はさらに1週間、彼女は2週間は自宅待機にしようと決め、翌日に、授業の中止を生徒たち全員に連絡しました。ところが、一週間後の3月15日、スイスは緊急事態宣言が出され、ロックダウンに突入したのでした。


12

Programming Manager, London, 2020.03, (39), ♀

ロンドンでのロックダウン直後のプログラミングマネージャーの一日です。夫婦で一緒にいれる時間が増え、1日何回もデート(ピンク)しています。


13

Executive officer, Shibuya, 2020.04.09, (45), ♂

テレワークにより1日に21本のZoom会議を行う東京の会社役員の一日です。会議と会議の間のブルーはオンライン会議とオンライン会議の間を移動しています。


14

Pregnant Woman, Tokyo, 2020.05.22, (42), ♀

出産予定2日前、全く兆候のないまま夜を迎えました。長男を長めのお風呂に入れて出た所で突然陣痛。この時すでに7分間隔。病院に電話し、すぐに移動しました。コロナのため出産立会い禁止だったので陣痛中にWiFiを繋ぎすぐ分娩室へ。ライブ配信で夫と息子に応援されながら出産しました。出産直後出血多く記憶はなし、次の日の夜に赤ちゃんを抱けました。


15

Architect, La Neuveville, 2020.06.13, (58), ♂

スイスの建築家の一日。レマン湖沿いにある美術館Musée du Lémanの増築に伴うコンペティションの為に、1日中プロジェクトに専念していました。

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A Life Stripe work is a "pattern of life" made by replacing one's everyday actions such as sleeping, dining, relaxing, and working, with 21 colors selected based on research, and recording them along a 24-hour axis.

The idea was inspired by a friend who had withdrawn from society. To help their friend maintain a regular routine, they started to exchange a daily activity journal, which eventually led to recovery. This inspired a new project in which They recorded the daily activities of different people and converted them into colored bands that could be displayed as graphics. Seeking assistance from a psychologist They knew, they conducted statistical research on human activities and determined twenty-one categories of activities to record. Next, they performed a statistical color study to determine which colors should represent each activity. They followed the results of the study for all activities except for work/study. Although many people associated work/study with dark colors, they decided to assign the category a lively red, as these two actions form the foundations of daily life.

In this way, they collected records from a diverse group of people, animals, and even insects, whose daily activities were converted into colored blocks and presented as Life Stripe. The goal was to encourage people to recognize that each day is beautiful for having been lived. This initiative is ongoing. At present, we have collected data for a single day from over 150,000 people. With the recent spread of Coronavirus, They began to question the effects of this on our everyday lives. They saw this as the perfect opportunity to start our research on life after the Coronavirus pandemic, and have already produced and presented several works.